2024年6月、BTSの最年長メンバー・JINさんが兵役除隊翌日に開催した「ハグ会」で事件が起きました。
参加した50代日本人女性が、JINさんに無断でキス。
JINさんが明らかに困惑する表情を見せたこの瞬間はSNSで拡散され、世界中のファンから非難が殺到しました。
韓国警察はICPOを通じて女性の身元を特定し、日本の警察とも連携。出頭要請まで行うという異例の事態に発展しました。
この事件、単なる「非常識なファンの迷惑行為」として片づけることはできません。
背後には中年女性特有の心理や社会的背景、現代の推し活文化の歪みが隠れているのです。
なぜ50代女性は“暴走ファン”になってしまったのか?
①「推しに触れれば若さを取り戻せる」幻想
50代という年齢は、加齢による容姿や体力の衰えを強く意識せざるを得ない世代です。
鏡に映る自分と、スマホ画面に映るJINさんの美しさを比較し、「あの輝きに触れれば、自分も若返るかもしれない」といった魔法のような期待を抱く人も少なくありません。
さらに、韓国アイドルは「ファンを特別扱いする演出」が非常に上手です。
ファンサイン会で名前を呼んでくれる、ファンレターに反応してくれる、目を見て微笑んでくれる。
これが「自分は特別なファン」という誤解を生み、「触れることで推しとエネルギーを交換できる」という、一種スピリチュアル的な思い込みにつながることがあります。
実際、今回の50代女性も「JINさんの肌はとても柔らかかった」とブログに綴っています。
まるで若さとエネルギーを手に入れたかのような感覚を得たのかもしれません。
これは単なる推し活を超えた”儀式に陶酔する”ような心理に近いのでないでしょうか。
「推し=人生最後の恋」現実逃避の恋愛依存
50代女性にとって、恋愛はもう遠い昔の思い出という人も多いでしょう。
結婚生活は惰性、夫にはときめかない、リアルな恋愛に挑戦する勇気もない。
そんなときに出会ったのがJINさんという完璧な存在です。
推し活が「人生最後の恋」に変わると、ファンとしての節度は崩壊します。
ファンサービスの一環でハグしてくれるだけなのに、「特別な意味がある」と勝手に解釈。
これは、もはや超えてはならない一線を越えた”暴走”そのものです。
「もう年だから、このチャンスを逃したら次はない」という焦燥感も、この暴走に拍車をかけます。

「若いファンには負けたくない」世代間マウント
BTSファンには10代20代の若い女性も多く、年齢層の幅広さが特徴です。
50代ファンにとって、若いファンは“同じ推しを巡るライバル”でもあります。
「若い子は顔が可愛いから認知されやすい」「私はファン歴が長いのに不公平」といった被害者意識が、
「せめて大胆な行動で覚えてもらおう」という暴走行為の引き金になるかもしれません。
ファン同士で「私は何回目撃された」「目が合った回数」などを競う“ファンサマウント合戦”も珍しくありません。
50代ファンが若いファンに対抗心を燃やし、「若さでは負けるけど、度胸と行動力では負けない」と暴走してしまうのかもしれません。
「推しだけが私を見てくれる」という承認欲求依存
50代になると、家庭や職場で誰からも必要とされなくなる孤独感を抱く人も少なくありません。
特に日本の50代女性は「母親役」「妻役」「職場のお局」という立場を背負い、自分自身を見てもらう機会が激減します。
そんな中で、推しは唯一自分を見てくれる存在になりがちです。
「私の愛を受け止めてくれるのは推しだけ」という思い込みが強くなると、
「私の愛情表現は推しに受け入れられて当然」という身勝手な特権意識に変わります。
無理やりのキスも、「これは私なりの愛情表現」という自己正当化が働いている可能性が高いです。
「推し活が全人生」になってしまう危うさ
本来、推し活は人生を豊かにする趣味です。
ところが、家庭や仕事に生きがいを見出せなくなった50代女性にとって、推し活が人生のすべてになってしまうケースがあります。
すると、推し=自分の人生そのものという歪んだ構図になり、推しに対する執着はエスカレートします。
- 推しの幸せより、自分が認知されることが優先
- 推しのためではなく、自分のための行動に変質
- 推しを自分の所有物のように感じる
こうなれば、ファンではなくストーカー心理に近づきます。
50代という年齢で「常識ある大人」の自制心を失えば、**周囲の目にも痛々しい“暴走おばさん”になるのです。
年齢は関係なく、暴走する人間が「痛い」
推し活に年齢制限はありません。
10代でも50代でも、誰をどれだけ熱く応援するかは個人の自由です。
しかし、世間が「中年の推し活は痛い」と決めつける風潮があるのは、一部の非常識な迷惑ファンのせいです。
50代でもマナーを守り、推しへの愛を“尊重”という形で示しているファンはたくさんいます。
年齢ではなく、問われるべきは推しへのリスペクトを持てるかどうか。
それを忘れ、自分の欲求だけを満たすために暴走するファンこそが、本当の意味で“痛い存在”なのです。
年齢で線を引くのではなく、「ファンとしての品格」があるかどうか。
そこにこそ、推し活を長く続けるための本当の分かれ道があるのです。
推しを愛するなら、まずは“推しを守る”意識を!
JINさんはデビュー以来、ずっとファンを大切にし、ファンへの感謝を言葉にしてきたアーティストです。
そんなJINさんを、「愛している」と言うはずのファンが傷つける――これほど悲しいことはありません。
推しへの愛を声高に叫ぶ前に、自分自身の行動が推しを守るものになっているか、推しに恥をかかせていないかを冷静に振り返ること。
それこそが、真のファンとして果たすべき最低限の責任です。
推しはファンに幸せを与えてくれる存在ですが、同時にファンこそが推しを守る存在でもあります。
「推しを守れるのはファンだけ」――この意識を持てるかどうかが、愛か執着かを分ける大きな分岐点です。
まとめ
BTS・JINさんのハグ会で起きた50代女性ファンの暴走事件は、単なる「痛いファンの迷惑行為」では済まされません。
その背後には、年齢を重ねる中で生じる若さへの執着や、現実逃避としての恋愛依存、さらには承認欲求の肥大化といった心理が複雑に絡み合っています。
特に、推し活が人生の中心になってしまうと、推しを愛しているつもりが、実は自分自身の寂しさや焦りを埋めるために推しを“利用”している状態に陥りやすいのです。
推し活に年齢制限はありませんが、大切なのは年齢ではなく、推しへのリスペクトを持てるかどうか。
ファンとして守るべきルールやマナーを忘れ、「推しに触れたい」「特別になりたい」と自分本位な感情を暴走させれば、それはもはや“愛”ではなく“迷惑”でしかありません。
JINさんがこれまでどれほどファンを大切にしてきたかを知るファンなら、自分自身の行動が推しにどう映るのかを考えられるはずです。
推しへの本当の愛とは、適切な距離感と節度を持ち、推しの尊厳を守ること。
推しへのリスペクトがあってこそ、推し活は心から楽しめるものになるのです。